HOME書評リレー > 書評: クリの木と縄文人

第34回 (2017,01,31)
鈴木 三男 著 『クリの木と縄文人』

評者: おかむら みちお ()

書名 クリの木と縄文人
著者 鈴木 三男 著
発行元 同成社
出版日 2016/12
価格 3,780

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はじめに
第1章 クリ、縄文人に出会う
 1.森の恵み
 2.日本の森林帯
 3.縄文人の棲んだ森
 4.縄文人が棲み始めた森
 5.クリ、縄文人と出会う
第2章 クリという木
 1.クリの分類と分布
 2.クリの巨木を訪ねる
 3.クリはいつから生えていたのか?
 4.クリのすばらしさ
第3章 クリと共に歩んだ縄文人
 1.縄文社会の発展:東日本と西日本
 2.縄文のムラ
 3.縄文のムラとクリの木
 4.縄文人の食生活を支えたクリ
第4章 縄文人のクリ資源管理を考える
 1.クリの資源量を計る
 2.クリを伐る
 3.10年計画の実験を開始
 4.10年後、クリは増えたか減ったか?
 5.クリの成長
 6.縄文人はクリをどこに生やしていたか?
第5章 海を渡ったクリ
 1.クリの集団遺伝子解析
 2.海を渡ったクリ
 3.円筒式土器文化圏とクリ
第6章 クリは日本人と共に
 1.弥生時代のクリ
 2.鉄器時代のクリ
 3.ふるさとのクリ
 4.日本人とクリの未来
参考文献
あとがき

 著者の鈴木さんは、東京の下町に育ち、子供のころから植物採集が好きだったという。夏休みには、福島県の白河の祖父母の所で自然に親しんだ。植物学で有名な先生たちがいる都立両国高校にあこがれ、猛勉強して入学し、植物採集に励んだらしい。そして千葉大・東大に進んで、シダ植物から木材に研究の中心がシフトしたらしい。
 1980年ころから関東で開発事前の発掘調査が低湿地にも及び、中里遺跡・寿能遺跡などが発掘された。低湿地遺跡の発掘によって、縄文人の植物利用が、大いに進んでいた実態が次々に明らかになり始めた。そして現在まで、植物考古学の目覚ましい成果が次々に発信されている。この当初の調査に鈴木さんは駆り出され、主に出土木材の樹種を調べる役割で、考古学との出会いが始まった。それ以来、長年植物考古学のパイオニアとして調査研究を主導してきた。やがて研究が進み、縄文人が栽培して大切にしたクリとウルシに行きついたようだ。
 彼のこれらの最大関心事、クリとウルシのうち、クリについてまとめたのが本書だ。第1章は「クリ、縄文人に出会う」で、縄文人がクリに出会ったのではない、と言うところがミソだ。第2章「クリという木」は彼の植物学の本領発揮だ。第3章「クリと共に歩んだ縄文人」は彼なりの視点で日本列島の自然植生環境下での縄文人の活動を描いている。第4章の「縄文人のクリ資源管理を考える」はとかく縄文時代にクリが栽培されていたはず、と言う、明確な根拠もなく、観念で理解してしまいがちな一つ一つの事象を生態学的に出来るだけ跡づけようとした長期にわたる実験のまとめで、出てきた結論になるほどと領けるものがある。第5章「海を渡ったクリ」は北海道道南地方に於ける円筒式文化圏の形成がクリを伴った人と物の交流の結果であることを現生のクリのDNA解析から明らかにした彼の教え子の研究を詳細に紹介したものである。第六章は終章で、縄文時代以後のクリの行く末を現在、そして未来まで描こうとしているが、縄文時代以後のクリの価値が下がって行くに従ってのトーンダウンは否めない。
 彼はこの本で、縄文人は集落に栗林を造り、管理し、木材や樹皮を建材などに使い、もちろん実を食べ、最後は燃料にもして、余すところなく利用したことを明らかにしてきた。一方で、大きなクリの木を育てて太く高い柱材にし、シンボルツリーともしたらしい。この本には、縄文文化、そして日本文化において、重要な役割を担ったクリについての植物学的・考古学的成果が、必要十分に分かり易く語られている。
 著者と私との本格的な出会いは、2005年に東欧日報の支援を得て八戸市などと行った「是川遺跡ジャパンロード漆の道」調査だったと思う。北京市から中国東北部のウルシと漆文化を、東奥日報の記者たちと一週間一緒に訪ねて歩いた。そして2008年からは、私が宮城県の宮戸島里浜貝塚のある縄文村歴史資料館名誉館長として宮戸島にしばしば滞在するようになってからは、最も楽しい、そして研究の話も弾む飲み友達となった。私は、低湿地調査の最新情報や出土植物遺体などの情報を提供して少しはお役にたち、逆に島の植生調査や復興の専門的知識の提供を依頼してきた。しかし、研究仲間というよりは、同い年の良き同志である。二人とも昔から通っていた奥松島・宮戸島が、三陸大津波を被災し、その恩ある宮戸島の復興を支援したいと願った。そこで2011.3.11を記念して、縄文以来利用され、美しい景観を作っていたヤマザクラを、地元や全国の有志と共に2011本植樹を目指して現在も活動を続けている。一家をなしたベテラン研究者の研究人生と蘊蓄に、是非触れていただきたい。
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