書評コーナー

第13回 2014.04.08

津軽海峡域の先史文化研究
発行元: 六一書房 2014/02 刊行

評者:市川 健夫 (八戸市埋蔵文化財センター 是川縄文館)

津軽海峡域の先史文化研究

著書:福田 友之 著

発行元: 六一書房

出版日:2014/02

価格:¥12,100(税込)

目次

第1章 津軽海峡域の先史文化
 1 津軽海峡と亀ヶ岡文化
 2 津軽海峡と縄文文化
 3 三内丸山遺跡と津軽海峡
第2章 津軽海峡域の文化交流
 1 津軽海峡の先史文化交流 青森県出土の黒曜石製石器・硬玉製品・外来系土器
 2 亀ヶ岡文化圏の物の動き―東北地方北部の黒曜石・ヒスイ製品を中心として
 3 津軽海峡を巡る黒曜石の動向
 4 オンネアンズと糸魚川
 5 ベンガラの利用と交易
 6 津軽海峡を巡る交易の品々
第3章 津軽海峡域の装身具
 1 ヒスイ以前の津軽海峡域 縄文前期以前の石製装身具を中心にして
 2 津軽海峡域における玦状耳飾り 三角形玦状耳飾りを中心にして
 3 津軽海峡域における先史ヒスイ文化
 4 首飾りの色 本州北端・縄文晩期の例から
 5 青森県出土の琥珀
 6 津軽海峡とサメの歯 本州北辺地域出土のサメの歯をめぐって
第4章 津軽海峡域の貝類文化
 1 北日本におけるベンケイガイ交易 津軽海峡を渡った貝輪
 2 津軽海峡域と南海産貝類 津軽海峡域におけるイモガイ形製品をめぐって
第5章 津軽海峡域の漁猟・祭祀
 1 津軽海峡域における土器片錘 下北半島発茶沢(1)遺跡の資料をもとにして
 2 縄文期のサケ漁具2例 民俗資料との比較から
 3 本州北辺地域における先史アスファルト利用
 4 宇鉄遺跡の石銛装着 津軽海峡南岸の恵山文化期の例
 5 津軽海峡域における動物装飾付き土器と動物形土製品
 6 津軽海峡交流と弥生石偶 青森県畑内遺跡出土の石偶をめぐって
 7 弥生の水田稲作と津軽海峡域
第6章 津軽海峡域の特殊な遺物
 1 ロシア連邦国立極東博物館所蔵の大型磨製石斧
 2 津軽半島今津遺跡の鬲状三足土器 「江南文化和古代的日本」に関連して
 3 津軽海峡と青玉象嵌
付 章
 1 津軽海峡と亀ヶ岡文化
 2 津軽海峡を巡る黒曜石の動向
 3 ベンガラの利用と交易
 4 津軽海峡域における玦状耳飾り
 5 津軽海峡域における先史ヒスイ文化
 6 青森県出土の琥珀
 7 津軽海峡とサメの歯
 8 北日本におけるベンケイガイ交易
 9 津軽海峡域と南海産貝類
 10 津軽海峡域における土器片錘
 11 本州北辺地域における先史アスファルト利用
 12 津軽海峡交流と弥生石偶
 13 ロシア連邦国立極東博物館所蔵の大型磨製石斧
 14 津軽半島今津遺跡の鬲状三足土器

 北海道と本州島を隔て、日本海と太平洋を結ぶ津軽海峡。考古学では、先史時代のヒトやモノをつなぐ海の道として知られ、文化圏の成立や資源の流通、あるいはヒトの移住など、様々な研究上の話題があり、議論されている。こうした今日的理解の基礎となった研究に著者、福田友之氏の一連の仕事がある。
 著者は「津軽海峡と先史文化との関わり」を研究の主題とし、これまで多彩な研究成果を公表してきた。本書は、昭和51年(1976)から平成20年(2008)にわたって発表された論考27編を6つの章にわけ、書き下ろした付章を加え、まとめられたものである。本書は以下の章から構成される。

 序
第1章 津軽海峡域の先史文化
第2章 津軽海峡域の文化交流
第3章 津軽海峡域の装身具
第4章 津軽海峡域の貝類文化
第5章 津軽海峡域の漁猟・祭祀
第6章 津軽海峡域の特殊な遺物
付 章
※項目詳細は、当HPの書籍紹介を参照されたい。
(”目次を表示>>”を押していただきますと目次がご覧いただけます)

 第1章では、亀ヶ岡文化、縄文文化、三内丸山遺跡を題材に、津軽海峡域の文化交流に関する研究の重要性が説かれる。ヒトとモノの動きやその解釈を捉える上で、北海道南部と東北北部での地域研究の深化と、需要と供給の関係を捉えやすい黒曜石・硬玉(ヒスイ)・アスファルト、猪に関する研究が必要であると言及している。
 第2章では、黒曜石製石器と硬玉製品の原産地分析やデータ集成、外来系土器(特に北海道系)やベンガラ利用に関する集成が実践される。黒曜石製石器から北海道・東北北部の各航海ルートを想定したほか、黒曜石製・硬玉製品から亀ヶ岡文化圏のモノの動きを示したことが特筆される。北海道置戸町オンネアンズ川での黒曜石原石の確認など、示唆的な踏査記録も盛り込まれている。
 第3章では装身具を取り上げ、硬玉などの石製品・サメの歯などの視点から検討されている。特に石製品では、硬玉利用を画期として通時的な様相を捉え、縄文時代前期末葉における三角形玦状耳飾りの展開に重要性を見出すなど、注目すべき成果が多い。サメの歯では、副葬の視点から北海道南部と東北北部での葬送習慣の違いを指摘し、津軽海峡には日常的な文化交流を遮る一面があったことを示唆した。
 第4章では、ベンケイガイ製貝輪と、イモガイ形土製品などから示唆される南海産貝類に焦点をあて検討される。北日本を中心とした集成と現地踏査を行い、貝の生態にも触れつつ、特に数量的な比較から交流の様相へアプローチする。ベンケイガイ製貝輪では、青森県域の現地踏査から七里長浜を中心に日本海沿岸部がベンケイガイの一大産地であることを明らかにした。需要と供給を考える上で重要な成果である。
 第5章では、漁猟と祭祀に焦点をあて、縄文時代の土器片錘やサケ漁具、アスファルト利用のほか、弥生・続縄文時代の石銛や動物意匠、石偶、水田といった視点から交流の変質とその背景を探る。土器片錘では、形態・大きさから漁法や対象魚の地域的な違いが想定されたが、石銛では形態や柄の装着方法、副葬のあり方が対岸の二地域で共通するなど、時代毎で対照的な様相が示された。モノの動きだけではなく、「先史時代の海民・海人の活動」という視点の必要性が提起されている。
 第6章では、津軽海峡域で出土する、大陸文化の影響が示唆される大型磨製石斧・鬲状三足土器・玉象嵌土製品について、極東ロシア・東アジアの視点をふまえ検討される。大陸文化の影響を津軽海峡域の文化交流へ結びつけて論じられており、興味深い。
 付章では、各論考の補足として、関連する新資料や近年の研究動向について紹介されている。津軽海峡域の研究を起こす際に有用な情報となる。

 本書の特質は、丹念な資料の集成と分析、フィールドワークに裏付けられた説得力ある論の展開にある。こうしたデータにもとづく数々の解釈には今なお傾聴すべき点が多く、また豊富な集成成果は今後広く活用されるものである。
著者は問題意識を明確にし、装身具や石材資源など多彩な課題を一つ一つ精緻に解きほぐして、津軽海峡域の文化交流を読み解いていこうとする。その研究姿勢は、あらためて高く評価されなければならない。
 本書へ指摘点をあげるとするなら、各論考を通じた総括が十分に示されなかったことであろうか。今後の研究の中で語られていくことが望まれる。
津軽海峡域の北海道と本州島北部における地域間の相互関係は、時代の移り変わりとともに、民族をめぐる文化的、社会的な背景も相まって複雑に変質していく。津軽海峡域の地域史を解明するためには、地域間に内在する歴史的なコンテクストを精緻に捉えることが必要である。本書で示された研究成果の数々は、こうしたコンテクストが形作られる過程を理解する上で重要であり、その意味においても、本書は津軽海峡域の今後の研究を導く書として、多くの研究者に読まれていくことだろう。

津軽海峡域の先史文化研究

著書:福田 友之 著

発行元: 六一書房

出版日:2014/02

価格:¥12,100(税込)

目次

第1章 津軽海峡域の先史文化
 1 津軽海峡と亀ヶ岡文化
 2 津軽海峡と縄文文化
 3 三内丸山遺跡と津軽海峡
第2章 津軽海峡域の文化交流
 1 津軽海峡の先史文化交流 青森県出土の黒曜石製石器・硬玉製品・外来系土器
 2 亀ヶ岡文化圏の物の動き―東北地方北部の黒曜石・ヒスイ製品を中心として
 3 津軽海峡を巡る黒曜石の動向
 4 オンネアンズと糸魚川
 5 ベンガラの利用と交易
 6 津軽海峡を巡る交易の品々
第3章 津軽海峡域の装身具
 1 ヒスイ以前の津軽海峡域 縄文前期以前の石製装身具を中心にして
 2 津軽海峡域における玦状耳飾り 三角形玦状耳飾りを中心にして
 3 津軽海峡域における先史ヒスイ文化
 4 首飾りの色 本州北端・縄文晩期の例から
 5 青森県出土の琥珀
 6 津軽海峡とサメの歯 本州北辺地域出土のサメの歯をめぐって
第4章 津軽海峡域の貝類文化
 1 北日本におけるベンケイガイ交易 津軽海峡を渡った貝輪
 2 津軽海峡域と南海産貝類 津軽海峡域におけるイモガイ形製品をめぐって
第5章 津軽海峡域の漁猟・祭祀
 1 津軽海峡域における土器片錘 下北半島発茶沢(1)遺跡の資料をもとにして
 2 縄文期のサケ漁具2例 民俗資料との比較から
 3 本州北辺地域における先史アスファルト利用
 4 宇鉄遺跡の石銛装着 津軽海峡南岸の恵山文化期の例
 5 津軽海峡域における動物装飾付き土器と動物形土製品
 6 津軽海峡交流と弥生石偶 青森県畑内遺跡出土の石偶をめぐって
 7 弥生の水田稲作と津軽海峡域
第6章 津軽海峡域の特殊な遺物
 1 ロシア連邦国立極東博物館所蔵の大型磨製石斧
 2 津軽半島今津遺跡の鬲状三足土器 「江南文化和古代的日本」に関連して
 3 津軽海峡と青玉象嵌
付 章
 1 津軽海峡と亀ヶ岡文化
 2 津軽海峡を巡る黒曜石の動向
 3 ベンガラの利用と交易
 4 津軽海峡域における玦状耳飾り
 5 津軽海峡域における先史ヒスイ文化
 6 青森県出土の琥珀
 7 津軽海峡とサメの歯
 8 北日本におけるベンケイガイ交易
 9 津軽海峡域と南海産貝類
 10 津軽海峡域における土器片錘
 11 本州北辺地域における先史アスファルト利用
 12 津軽海峡交流と弥生石偶
 13 ロシア連邦国立極東博物館所蔵の大型磨製石斧
 14 津軽半島今津遺跡の鬲状三足土器