<内容紹介>
小川英雄先生、近森正先生、鈴木公雄先生を中心とする指導体制のもと、慶應義塾大学文学部に民族学考古学専攻が設立されてから早4半世紀の時が流れた。
その間、三先生の薫陶を受けて研究者となり、今日第一線で活躍を続けている者も既に60名以上に及ぼうとしている。
本書は専攻創設25年の節目に際し、そうしたOB・OGをはじめとする専攻ゆかりの面々が、名誉教授となられた三先生に感謝の念を込めて書き上げた力作56篇からなる論文集である。
本書を通じ、三田で学び巣立っていった研究者達の多様性、さらには専門分野の違いを越え、日々対話と議論を重ねてきた学風などを感じていただければ幸いである。

<ひと>
1 �盪魁’� 更新世人類の「珊瑚礁の道」:南西諸島での更新世人類化石
2 羽生　淳子 狩猟採集民文化の長期的変化と地域的多様性:
『フォーレジングとコレクティングをこえて』所収の論考を中心として

3 山口　徹 住みよい環礁州島の条件:マーシャル諸島マジュロ環礁の先史居住
4 名島　弥生 琉球列島におけるサンゴ礁環境利用研究:漁撈活動復元研究を通して
<もの>
5 阿部　祥人 人と頁岩:二つの遺跡の検討から
6 渡辺　丈彦 東北地方日本海沿岸における石器石材の利用:東山系石刃石器群の分析から
7 米倉　薫 旧石器製作過程におけるブランク形状と石材消費効率についての試論:
目的剥片形状との関連を通して

8 古田　幹 礫群と集石のあいだ:埼玉県朝霞市泉水山・富士谷遺跡の資料より
9 藤山　龍造 石器研究の視角:利器としての剥片
10 山岸　良ニ 九十九里浜旧椿海周辺の縄文丸木舟
11 佐野　隆 縄文時代中期の住居内配石について(再論)
12 合田　恵美子 加曽利E4式土器における文様施文方法の変化に関する試論
13 稲村　晃嗣 千葉県山武姥山貝塚出土の縄文時代後期初頭土器について
14 大内　千年 環状貝塚に関する一視点:流山市三輪野山貝塚の事例から
15 稲野　裕介 岩版と岩偶の「岩」の用字について
16 稲野　彰子 岩版の周辺
17 藤村　東男 出土点数から見た土偶祭祀:西日本の場合
18 小林　圭一 遮光器土偶前額部の「ノ字文」について
19 渡辺　誠 ビッチ付着の編物用石錘
20 岡本　孝之 埼玉県の弥生系石剣
21 安藤　広道 装飾須恵器小像群の世界
22 大西　雅也 羨門部に石積施設をもつ横穴墓について:南関東の事例から
23 沼山　源喜治 陸奥国鎮守府胆沢城周辺の古代寺院の成立と展開
24 比毛　君男 中世瓦質土器と瓦についての小考:中世後期の茨城県内の事例から
25 森本　伊知郎 近世陶磁器における陶工の個人差:瀬戸磁器端反碗を中心に
26 石神　裕之 近世庚申塔の形態に対する多変量解析:東京近郊におけるB-1b類を事例として
27 須田　英一 上宮田陣屋の考古学的研究に関する素描:
三浦市大芝原遺跡・海防陣屋関連土塁をめぐる調査研究の現状

28 神野　信 砥石のある風景:ラオス北部に見る砥石の場所
29 藤原　達也 ガンダーラ北部域の仏教岩彫り群について:現地考古調査に基づく考察
30 高田　学 bit　hilaniとビート・ヒラニ型式
31 牧野　久実 イスラエル国エン・ゲヴ遺跡から出土したペルシャ時代からヘレニズム時代の土器:
遺物データベースにもとづいて

32 水村　直人 Clactonianインダストリーとは何か:近年のClactonian論争を振り返る
<こころ>
33 櫻井　準也 遺物の創造力:伝説の生成に関わる遺構・遺物
34 高杉　博章 神仏を祀る古代津軽のムラ
35 川崎　史人 トカラ列島平島の盆行事:20年の時をこえて
36 蔀　淳一 殷後期から西周時代前期の金文をめぐって
37 森　雅子 神女列伝:中国古代における地母神の残像
38 辛嶋　博善 社会主義体制の崩壊と脅かされる年長者の権威:
モンゴル国遊牧社会における陰暦二日の月を見ることを事例に

39 高山　純 インド起源の中国説話
40 杉本　智俊 古代レヴァントの雄牛像:表象理解への一試論
41 小板橋　又久 旧約聖書に見られる楽器の音
42 徳永　里砂 古代南西アラビアの砂漠の神々:ビィル・ヒマー地域の岩壁碑文研究から
43 永井　正勝 新エジプト語の出現と文字言語の分化
44 滝波　章弘 オートル・ボワイヤージュ誌のフランス人旅行文:差異と周縁の意識をつくるもの
45 井関　睦美 「年を束ねる儀礼」:先スペイン期メシーカ人による伝統の解釈と再生産
まなざし 46 小林　謙一 AMS14C年代測定と暦年較正を利用した縄紋中期の土器型式変化の時間
47 奈良　貴史 古組織学(Paleohistology)の考古学研究への応用
48 鵜澤　和宏 骨資料の特性と埋蔵の法則:動物考古学におけるタフォノミー研究の導入
59 姉崎　智子 動物考古学における年齢査定法のトリック:イノシシ類を題材に
50 佐藤　孝雄 “シカ送り”儀礼と二つの時間
51 朽木　量 「モノ」から「バケモノ」「ツクリモノ」へ:近世日本における器物認識の物質文化研究試論
52 五十嵐　彰 近現代考古学認識論:遺跡概念と他者表象
53 杉本　豪 考古学マネージメントとサービスの循環:イギリス考古学のイヴェント風景から
54 法橋　量 車田・車刈り再考:ドイツにおける農耕習俗と習俗研究パラダイムの転換
55 大石　徹 モニュメント研究の動向:人類学を中心に
56 棚橋　訓 モノとしての復権:ビーグルホール夫妻の『プカプカ民族誌』をめぐる覚書