<内容紹介>
　縄文時代の土器に描かれた狩猟文、弥生時代の銅鐸絵画、古墳時代の埴輪の絵画、これらいわゆる原始絵画は、当時の人々のくらしや社会のありかたを探るうえで、大いに活用されてきた。たとえば弥生時代に鳥に扮した人物が祭祀をおこなっていたことなどは、絵画資料に頼らなければ知ることのできなかった事実である。そのこと一つを取り上げても、原始絵画の研究が考古学にいかに大きな貢献をなしてきたかがわかる。本書は15名の気鋭の研究者が、さまざまな観点から日本を中心とする原始絵画の問題解明に取り組んだものである。そこには、日本原始絵画研究の一つの到達点が示されている。
<目次>
第1部　原始絵画研究の方法
設楽博己　日本原始絵画研究の歴史と課題
安藤広道　弥生時代「絵画」の構造　　　
藤田三郎　絵画土器の見方小考　手を挙げる人物と盾・戈を持つ人物　　
永嶋正春　居徳遺跡出土木胎漆器の漆絵に見られる大陸的様相について
第2部　地域の原始絵画
長沼　孝　北海道の原始絵画資料　　　
中沢道彦　中部地方の原始絵画研究の現状と課題　　　
久田正弘　北陸地方の絵画資料　　　
山田康弘　山陰地方の弥生絵画　　　
第3部　原始絵画の諸相
斎野裕彦　狩猟文土器と人体文　　　
石黒立人　伊勢湾周辺地域の人(黥)面線刻面線刻をめぐる二,三の問題　　
橋本裕行　「楼閣」絵画の再考　　　
常松幹雄　鹿と鉤の廻廊　　　
東　和幸　南九州地域の龍　　　
上野祥史　画象鏡の模倣について　図像分析の立場から　　　
小林青樹　韓国の原始絵画　支石墓の磨製石剣岩刻画例