<内容>
　2006年10月に開催されたシンポジュウムの記録に補論を加える。縄文の集落や社会はどこまで明らかになったのか?竪穴住居の構造、その居住期間や使用状況、そこに住んでいた人々の実態はどこまでわかったのか?鋭く問い直し、行く先を提示する。

<推薦文>
　進む縄文集落の実態解明
縄文時代の大型環状集落の一時的な景観を切り取ってみると、概して小ぶり。縄文集落見直し派の主張に、注目が集まる。見直し派は、実証派とも呼ばれる。持ち味は、徹底した現場主義だ。本書は、見直し派のシリーズ第2弾。AMS法による炭素14年代測定結果と発掘土壌の水洗選別による微細遺物の回収をメインテーマに、小規模集落の性格に対する考案もまじえ、縄文集落の実態解明を目指して、あつい議論が繰り広げられた。大型環状集落、それが縄文集落の一つの実態だとする、いわゆる伝統派、演繹派の反応やいかに。　　
―駒澤大学文学部教授　設楽博己

<目次>
刊行にあたって-縄文研究の新地平をあくまで目指す- 　　 小林謙一
　例　　言
1. 竪穴住居・集落調査のリサーチデザイン-水洗選別と年代測定を中心に-
　縄文時代集落研究の近況-「新地平スタイル」 の視座から- 　　 黒尾和久　　　
　新しい竪穴住居跡調査を目指して
　　-井出上ノ原遺跡の発掘調査に至る経緯-村本周三　
　AMS 14C 年代測定を利用した竪穴住居跡研究 　　 小林謙一　
　遺構調査におけるデジタル記録技術の適用　　加藤宣春・杉山　仁
　住居跡覆土の水洗
　　―縄文期の炭化種実検出を目的としたウォーター・フローテーションの現状と課題― 　高瀬克範　　　　
　多摩ニュータウンNo.72 遺跡における水洗事例
　　-325 号住居跡を中心として- 山本孝司・丹野雅人
　内陸遺跡の発掘調査と動植物遺体の回収 　　 佐野　隆
　武蔵野台地の縄文中期集落の成立
　　―野川上流域の縄文中期初頭・前半の集落の場合―　 中山真治
　千葉県における小規模集落の分析
　　-中期後葉土器編年に関する補足・市原市中潤ケ広遺跡の事例を手がかりに-　大内千年
2. 討論の記録 　　 　
　リサーチとはなにか 　　 　
3. 補論とコメント 　　 　
　小林発表へのコメント-水子貝塚炭素年代の別解釈-　早坂廣人
　年代測定における同定作業―炭化材を中心に― 　遠部　慎・宮田佳樹・小林謙一
　縄文集落研究における二つの時間 　　 桜井準也　
　考古時間論 -縄紋住居跡応用編-　　 五十嵐　彰
　遺跡発掘調査における 「微細物分析」 の可能性と展開について　矢作健二
　青森県における水洗選別事例　　 中村哲也
　袋状土坑における覆土形成過程の復元
　　-一括回収資料から得られる情報を中心に -　合田恵美子
　多摩の低地遺跡-あきる野市砂沼遺跡の事例から-　武川夏樹
　竪穴住居跡のライフサイクルの検討 ―大橋遺跡 SJ47 号住の再検討―　大野尚子・小林謙一
　東海地方の集落研究事例を紹介して　　 纐纈　茂
4. 展　　望 　　 　
　さらに縄文研究の新地平を　　 小林謙一