<内容>
鳥取大学地域学部と鳥取県は互いに共通する課題をテーマとした共同研究を進 めており、その成果をシンポジウムという形で公表している。これは2007年 6月2日(土)、鳥取県民文化会館小ホールで開催された、第7回目となる標記 シンポジウムの記録である。
　5人の研究者の共同研究に関する意見交換のなかで、研究のキーワードは「遺 跡の顕在化」あるいは「歴史の顕在化」であると合意された。ここでいう遺跡とは、考古学の遺跡や中世の遺跡等に限定されない、耕地・川・土手・集落そのほか、身近に存在する歴史的に形成されたものすべてを指している。そうした遺跡は、それが歴史的に形成されたものであると理解されているとは限らないし、たとえ学術的に明らかになっているとしても、広く知られているとはいえないものも多い。したがって「顕在化」には、これまで知られていなかった遺跡の実像を明らかにし、隠された歴史性を発見するという意味とともに、既知の遺跡であっても、その意味をより広く知ってもらう、という意味も込められている。
パネルディスカッションの中でもうひとつ合意されたのは、環境の構成要素として歴史的要素は欠くべからざるものである、という認識である。環境には、水・空気・土等、人間を取り巻く自然的・物質的なものだけではなく、地域に重層的に積み重ねられた歴史の堆積も含まれている。その歴史的環境の具体事例については、本書を参照されたいが、身近に歴史を感じ、心豊かに生きることを、私たちはもっと重視すべきではないか〜遺跡・歴史の顕在化によって、私たちを取り巻く環境の内容をより豊かものにしよう、という提言がなされた。こうした試みが成功しているか、失敗に終わっているかは読者の判断に待つほかないが、私たちはこうした方向で今後も共同で研究を進めていきたいと考えている。
(序文より抄)

<目次>
シンポジウムの記録
問題提起 　　歴史的環境とは何か　　　　　　　　　　　　　鳥取大学地域学
部講師　　?田健一

基調報告1 　中世城館の理解と保存のために　　　　　　　　鳥取大学地域学
部教授　　錦織　勤

基調報告2 　史跡における歴史的環境の形成と保全　　　　　鳥取県教育委員
会文化課　浜田竜彦
―史跡鳥取藩主池田家墓所を中心に―

基調報告3 　住まいからみる歴史的環境　　　　　　　　　　鳥取県教育委員
会文化課　松本絵理

基調報告4 　近代化遺産としての若桜鉄道　　　　　　　　　鳥取県教育委員
会文化課　中原　斉
―鉄道沿線の歴史的環境―

パネルディスカッション　　　　　コーディネーター　錦織　勤
　　　　　　　　　　　　　　　　パネリスト 　　　　?田健一・浜田竜
彦・松本絵理・中原　斉

付編　鳥取市安長・嵐ヶ鼻土手の調査　鳥取大学地域学部地域環境学科