<執筆者>
古川登・宮本哲郎・片岡宏二・久田正弘・大賀克彦・ 野澤雅人・土屋みづほ・稲葉千絵・鈴木稔・釘谷紀・松谷久史・堀大介・的矢俊昭・中川あや
<目次>
報告編　
　1調査経過　2甑谷在田遺跡D地点の調査　3甑谷在田遺跡C地点の調査　　4甑谷在田遺跡B地点の調査　　5甑谷在田遺跡A地点の調査　6甑谷城跡の調査　7調査の総括
研究編
英文目次　写真図版
<内容>
キーワード:北陸地方最古の弥生土器群・西川津技法系の管玉製作工程品　
　甑谷在田遺跡D地点出土土器群は、藤田三郎の大和��-2様式に併行する土器群であるから、弥生時代中期初頭と報告している。しかし、藤田の大和�桐夕阿�、佐原真・井藤暁子の編年で言う前期新段階に併行する土器群であることを失念しているむきがある。たとえば、島根県西川津�爾諒塲�では甑谷在田遺跡D地点出土土器群は前期�犬吠珊圓垢襦�このことは、出土した管玉製作工程品がいわゆる西川津技法系であることと調和している。出土した土器群の構成が、遠賀川系壷・甕、大和形系条痕ハケ甕、条痕文甕、ヘラ描き多条沈線文、櫛描き文からなるという事実を見ていないのだろう。この甑谷在田遺跡D地点出土土器群の詳細は、研究編の越前における弥生時代中期の土器編年を一読されたい。
　西川津技法系管玉製作は、原石-未製品-製品など全工程と、めのう製玉錐、紅簾片岩製擦切具などの工具が出土。なお、西川津技法系で、甑谷在田遺跡例のみが製作時期を特定できることが注意される。
　甑谷在田遺跡A地点の調査では古代の河跡が検出され、河中に打ち込まれた杭、多量の斎串、馬形、舟形などの木製祭祀具。木製の皿、曲げ物容器、刳り抜き容器など容器類。特筆されるのは歪んだ8世紀前半の須恵器蓋ばかり8個体がまとまって川岸に廃棄された状況で出土したことで、歪んだ須恵器は荷揚げの後に検品して廃棄された物とみられる。そうすると、甑谷在田遺跡A地点は河川の港にあたる船瀬、古代の物資集散地であった可能性が高い。なお、墨書は確認されなかったが荷札木簡とみられる木製品も出土しており、その蓋然性は高いと言える。
　研究編には片岡宏二「甑谷在田遺跡出土土器について-朝鮮系無文土器の観点から-」、大賀克彦「日本列島における管玉生産の成立」、古川登「越前における弥生時代中期の土器編年」、堀大介「越前における弥生時代後期〜古墳時代前期前半の土器編年」を所収。
　片岡の甑谷在田遺跡出土土器について-朝鮮系無文土器の観点から-は、朝鮮系無文土器の観点から甑谷在田遺跡D地点出土土器群を検討している。
　大賀の日本列島における管玉生産の成立は、日本列島に入ってきた管玉生産の技術的系譜とその拡散について詳細に論究しており、日本考古学で手工業生産の「玉作」を研究するむきにあっては、読んでおかなければならない基本文献である。