<内容>
　当研究会では一昨年そして昨年と2年にわたって埴輪を主な検討対象として、研究集会を開催しました。第13 回研究集会では、「円筒埴輪の導入とその画期」と題して発表・討論が行われ、前期中葉に畿内的な埴輪が各地に波及するという共通認識が得られました。続く第14 回研究集会では「埴輪からみた中期古墳の展開」がテーマとなりました。中期においては地域毎に埴輪の受容に差が認められることがわかりました。同時に中国四国地方の出土埴輪を集成、網羅しえたことは今後の研究資料としても大きな成果といえます。
　今回の研究集会では、これらの成果を受け、後期〜川西�梗鮎�輪〜の様相を検討していきたいと思います。古墳時代後期においては、後期前半に中期からの首長墳系譜が断絶する地域や、その逆に中期後半に首長墳系譜が一度断絶したにもかかわらず、後期後半になって再び前方後円墳が築かれるようになる地域があります。また、横穴式石室の導入、群集墳の出現と古墳のありようが大きく変容する時期でもあります。こうした時代の変化、そして首長墳系譜の断絶と復活の影響は、埴輪生産にどのように反映されているのでしょうか。
　中国四国地方の各地域の状況を資料集成とあわせてご報告いただき、それぞれの地域の動向を整理するとともに、その背景にある埴輪の生産体制、集団関係、ひいては古代国家成立へとむかう政治的変動へと迫りたいと思います。
(シンポジウム開催案内より抜粋)
<目次>
〔総括報告〕
犬木 努　後期古墳出土埴輪の諸問題　関東地方を中心として
〔地域報告〕
田中 大　山陰地方における古墳時代後期円筒埴輪の様相
手島智幸　山陽西部における後期円筒埴輪の様相
尾上元規　山陽東部における後期埴輪の様相
山内英樹　四国西部における古墳時代後期の埴輪
西本和哉　四国東部における古墳時代後期の埴輪
【中国四国地方 後期古墳出土埴輪集成】※約380頁
鳥取　島根　岡山　広島　山口　香川　徳島　愛媛
※集成に掲載されている項目は、遺跡名、出典元文献、古墳の図版(と大きさ)、埴輪図面。各県ごとに県内のどこから埴輪が出土しているかわかるような地図が載っています。