※韓国側の発表も日本語訳が収録されています
<内容>
　韓国では近年、従来の知見にない初期馬具の発掘例が増え、注目を集めている。日帝時代から朴政権時代、1900〜 1970年代にかけて、まず慶州・大邸の5世紀前半〜6世紀前半にかけての新羅古墳出土馬具によって着手された韓国古墳時代馬具研究は、5世紀中葉〜後半を中心とした高霊池山洞古墳群を中心とした伽耶北部内陸部で進展をみ、更に映川玉田古墳群の調査が続いた。これに対して伽耶南部沿岸部では、1970年代以降の釜山東業福泉洞古墳群、1990年代以降の金海大成洞古墳群の調査によって、4世紀後半から5世紀前半に遡る初期馬具が多く見出され、列島の初期馬具の原郷と目されるに至り、特に近年の福泉洞38号墳、大成洞68。88・91号の調査成果が注目される。また西部地域においては、1980年代の清州新鳳洞古墳群の調査を契機に、5世紀後半の百済馬具解明の糸口が得られ、1990年代以降の同古墳群の調査拡大と、隣接する鳳鳴洞古墳群、天安の龍院里・斗井洞古墳群、原州法泉里古墳群などの成果で、百済の馬具資料も徐々に資料が蓄積し、最近では華城馬霞里古墳群、公州水村里古墳群、烏山水清洞古墳群の成果より、初期馬具の実態と使用階層の解明が進展しつつある。
更に中国東北部では、味J晰洞墳墓群の調査で三燕、集安高句麗王陵や五女山城、峨嵯山城の調査で高句麗馬具の資料が増大し、申敬激氏・金斗詰氏らによって提示された「胡族系轡」の先行系譜が明らかにされつつある。現在、各地の最新出土資料は、初期馬具の伝播ルートや実年代観、保有者層の見直しを迫るものとなっている。
　今回の研究会は日韓の馬具研究者が一堂に会し膝を突き合わせて検討することで、たいそう細かい、しかし重要な議論が展開されるものと期待しています。(研究代表武末純一氏開催趣旨より抜粋)
【目　次】
桃崎祐輔　「近年の韓国出土古墳時代馬具と日本列島の馬具の比較検討」
李　 尚律　「新羅・加耶馬具が提起する問題と日本の馬具」
諌早直人　「日韓初期馬具の比較検討」
柳　 昌煥　「三燕・高句麗の馬具と三国時代の馬具」
宮代栄一　「日韓古墳時代後期馬装の検討」
権　 度希　「百済地域馬具の編年」
井浦　 一　「福津市手光波切不動古墳の調査成果」
森下靖士・加藤和歳　「船原古墳遣物埋納坑発掘調査速報」
沈　 載龍　「金海市大成洞88号墳と91号墳の性格」
朴[王允]貞「チョクセム遺跡C10号出土品について　馬具を中心に」