<内容>
　今回「石器石材」をテーマとした理由は3つある。第1は、石器石材は重要なテーマではあるが、統一テーマとして議論してこなかったためである。石器石材は地域性認識の重要な要素であるとともに、地域集団動態を解明するための有力な材料である。これまでも、シンポジウムの部門テーマとして設定するとともに、各県で開催した談話会でも意識的に石材の問題を取り上げてきたが、地域性や集団の問題と直接結びつけて多角的な検討は行っていない。現状でも十分な資料的蓄積があるわけではないが、今後の研究に向けてまとめが必要な段階にきていると判断した。第2は第2回シンポジウム成果の継承である。第2回シンポジウムの討論を通じて、地域性の検討ために、中・四国地方各地域の基礎資料の重要さが改めて明らかとなり、第21回収降の談話会は開催県の旧石器時代資料(縄文時代草創期を含む)集成に努め、開催県の課題に即した議論を行ってきた。今回のシンポジウムはその総括的意味を持つが、これまでとは違う切り口、すなわち、石器石材を定点として地域性と集団の問題に迫ってみることにしたのである。第3は、今後の研究に備え、旧石器時代研究の基礎となる石器石材の基礎資料をこの機会にまとめておきたいという理由からである。列島全体に目を転じると、石器石材の研究は各地で重要なテーマであり続け、着実な研究の進捗状況を確認することができる。今回のシンポジウムが地域研究の一里塚となることを確信するとともに、旧石器時代研究進展の一歩となることを祈念したい。(本書”序”より抜粋)
<目次>
鳥取県の石器石材　大川泰広
島根県の石器石材　伊藤徳広
岡山県の石器石材　小嶋善邦
広島県の石器石材　沖 憲明
山口県の石器石材　小南裕一
香川県の石器石材　小野秀幸
徳島県の石器石材　原 芳仲
高知県の石器石材　森田尚宏
愛媛県の石器石材 池尻伸吾・多田 仁
第2部 石材と技術
　瀬戸内技法の成立とその背景　 絹川一徳
　瀬戸内技法の拡散と伝播　森先一貴
　湧別技法の流入/伝播　三好元樹
第3部 石材原産地と消費
　冠山産安山岩　沖 憲明
　赤色珪質岩　沖野 実
第4部 石材利用の時期的変遷
　後期旧石器時代後半期　氏家敏之
　石材利用からみた中四国地方の細石刃石器群　光石鳴巳
第5部 石材利用の地域性
　中・四国地方における石器石材利用の時期別動向と地域性　藤野次史
　関東地方における石器石材利用の時期別動向と地域性　佐藤宏之
　九州地方における石器石材利用の時期別動向と地)或性　荻 幸二
中・四国地方の石器石材資料集　※約50ページ