埋蔵文化財調査報告書63

※既刊初入荷

【内容】※本書”要約”より抜粋
当古墳は、盾形の二重周濠を有する墳長約74mの前方後円墳であり、 6世紀前半頃の築造と推定されている。これまで墳丘部分の発掘調査はされていない。今回の発掘調査地点は、古墳の二重周濠のうち、周堤(中堤)の前方部北側の隅部を含む外濠の一部にあたる。調査の結果、平坦な住宅地となっていた地表からごく浅い位置で、周堤部分の基盤となっていた地山と、この面からさらに数10cm掘り下げてつくつた外濠がみつかつた。この埋土の底近くでは、10〜 20cmの厚さで古墳時代の暗褐色の埋土(3層)が残っていて、この土層の周堤寄りの位置では、大量の破砕された埴輪の破片が出土した。場所によって人物や馬形、家形、水鳥形などの形象埴輪片が円筒埴輪片に多く混じるところがあることから、当時、付近の周堤上に並べられて埴輪祭祀がおこなわれた位置の近くであったことがうかがわれる。
今回の調査で、被葬者の身分、格式が高いとされる二重周濠をもつ前方後円墳の周堤、外濠の一部を調査し、多くの形象埴輪の存在が確認されたことは、当地域における小幡長塚古墳の位置付けの重要さを考えるうえで良好な資料となった。