【内容】
　本書は2012年11月に行われたシンポジウムと関連講演会の成果をまとめたものである。
　「北東アジアから朝鮮半島を南下した遊牧騎馬民族の一派が日本列島に渡り、従来の王権を倒して新しく打ち建てた国家が日本国家である」とする、江上波夫先生のいわゆる「騎馬民族征服王朝説」は魅力的で雄大である一方、多くの批判にもさらされてきた。 しかし、その一方で、4世紀末から5世紀末にかけて列島内で起きた馬匹文化導入、副葬品における馬具・武具の増加等の大きな変化が、4世紀にはじまる北方の遊牧騎馬民族の南下というアジア史的な大変動の波が、日本列島にまで及んだものであることが、近年の発掘成果により明らかになってきたことも事実である。(本書”はじめに”より抜粋)
【目次】
奥野正男　江上波夫先生の騎馬民族説と考古資料
小林敏男　騎馬民族説と王朝交代論
桃崎祐輔　騎馬文化の拡枚と農耕文明との融合　江上騎馬民族征服王朝説が描く文化融合モデルとその今日的意義
田中史生　華北の争乱と列島の古代史　5世紀の東アジア史再考
村上恭通　馬弩関と鉄　アジア北方金属文化の動態
鈴木靖民　騎馬民族説の今日的意義