【内容】
　朝鮮三国時代土器は地域性が非常に強く、形態・胎土・焼成・色調・文様が小地域ごとに異なる。加耶地域の陶質土器は、古式陶質土器では二つの地域性が見られ、一つが金海タイプである。これは金官加耶を表徴する土器である。5世紀以降、高霊タイプ・咸安タイプ・固城タイプの三つが見られ、それぞれ大加耶・阿羅加耶・小加耶を表徴する。新羅地域も慶州とその他の地域で形態などが異なり、昌寧タイプ・義城タイプ・星州タイプなどの設定が可能である。百済地域でも同様の現象が見られ、ソウル地域の土器編年を試みた。そして、装飾付陶質土器・新羅土偶や玉田古墳群に見られる特異なコップ形土器に関して検討を行った。また、東大関野貞資料の紹介を兼ねて、それらの陶質土器にも検討を加えた。最後に、陶質土器から見た加耶の実態、高霊タイプ陶質土器の東海岸からの出土例から大加耶滅亡に伴う強制移住を推測した。(九州大学博士論文の朝鮮部分に加筆刊行)

【目次】
はしがき
序　章　朝鮮三国時代陶質土器研究略論
　第1節　陶質土器とは
　第2節　陶質土器の変遷と地域色
　第3節　日本との関連
第1章　古式陶質土器の諸問題
　第1節　陶質土器の起源とソロバン玉形紡錘車
　第2節　加耶の成立と古式陶質土器
第2章　陶質土器の地域性と編年
　第1節　慶尚南道昌寧地域出土陶質土器の検討
　第2節　慶尚南道釜山・金海地域出土陶質土器の検討
　第3節　慶尚南道泗川・固城地域出土陶質土器の検討
　第4節　慶尚北道高霊地域出土陶質土器の検討
　第5節　慶尚北道義城地域出土陶質土器の検討
　第6節　慶尚北道星州地域出土陶質土器の検討
　第7節　ソウル地域出土三国時代土器の検討
第3章　陶質土器の個別器種の検討
　第1節　新羅土偶と楽器
　第2節　装飾付陶質土器
　第3節　陜川玉田古墳群出土の特異なコップ形土器について
　第4節　陜川玉田古墳群出土の特異なコップ形土器祖型再論
第4章　東京大学工学部建築史研究室所蔵関野貞資料に対する若干の検討
　第1節　慶尚南道晋州水精峰2号墳・玉峰7号墳出土遺物
　第2節　慶尚北道高霊池山洞古墳群出土遺物
　第3節　江原道溟州下詩洞古墳群出土遺物
第5章　陶質土器から見た政治的動態
　第1節　陶質土器から見た加耶の実態
　第2節　陶質土器から見た大加耶滅亡後の一動態
あとがき
初出一覧

【著者略歴】
定森　秀夫(さだもり　ひでお)
　1952年　岡山県生まれ
　九州大学文学部卒業,名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程修了
　平安博物館・京都文化博物館・徳島大学埋蔵文化財調査室を経て
　滋賀県立大学人間文化学部教授　博士(文学)
(主要論文)
　「韓国慶尚南道昌寧地域出土陶質土器の検討」(『古代文化』33-4,古代学協会,1981年)
　「伽耶土器の地域色」(『緑青』7,マリア書房,1992年)
　「陶質土器・初期須恵器からみた瀬戸内と朝鮮」(『古代王権と交流』6,名著出版,1995年)
　「考古学からみた伽耶」(『古代を考える 日本と朝鮮』,吉川弘文館,2005年)
　「近江の渡来人・渡来文化」(『大学的滋賀ガイド』,昭和堂,2011年)