※写真2は「静岡県袋井市出土梵鐘」　写真3は「再焼成・鋳造後の蜜蠟浸透陶製笵の鋳型面」
【目次】
古代の鋳造原料(銅素材)の材質と流通に関する研究　-鋳造遺跡出土銅関連遺物の組成調査を中心に-　鈴木瑞穂
要旨:古代の鋳造遺跡から出土した銅関連遺物(青銅塊、銅滓、製品破片など、6遺跡21点)を分析した。これまでの分析調査例を集成して、各遺跡で用いられた鋳造原料の組成について検討した。その結果、青銅製品の鋳潰しも含め、錫原料の調達が困難となった8世紀中頃以降、砒素、鉄および鉛の含有率が高い遺物が頻出する。
戦国鏡の制作-原型と印型を用いた制作法の検討　石谷 慎
要旨:戦国鏡の制作には、スタンプ状工具や原型が使用されたことが知られるが、その制作法については意見が分かれ、用語の統一もされていない。侯馬鋳銅遺跡から出土した青銅器鋳造関連遺物と複数のコレクション鏡を対象に、実際の資料に残る痕跡を手掛かりとして、制作法について検討した。
天理参考館蔵「鋳客」炉の研究(2)　器身・足部・鎖の製作技法に関する調査　丹羽崇史、三船温尚、太田三喜、劉 治国、石谷 慎　
要旨:　「鋳客」炉の本体は4つの外笵、1つの内笵からなり、右側面側壁の底部付近に湯口の痕跡がある。足部・半環は先鋳と考えられ、銲接の痕跡は確認できなかった。鎖の笵の構造に2種類があり、それらを組み合わせて鋳造し連結している。
3D スキャンと鋳造痕跡調査による古代中国青銅器の文様技法研究(1)　根津美術館所蔵 饕餮文方罍と饕餮文方彝について　三船温尚、廣川 守　
要旨:　饕餮文方罍は、3つの持ち手内側の器壁にある未研磨の凹線文様の凹線縁に特徴的な盛り上がりがあり、原型表面の常温固体油脂に工具で凹線を施文し、外鋳型を分割する方法で鋳造した。饕餮文方彝は、夔鳳文や饕餮文の眼の縁の凹線が抜け勾配でないことから、原型表面の常温固体油脂に凹線を施文し、外鋳型を完成した後に加熱し、油脂を液化して外鋳型を分割する方法であった。
静岡県袋井市出土の平治二年(1160 年)銘梵鐘の金属成分分析と鋳造技術　白澤 崇、三船温尚、長柄毅一　
要旨:　1983年に出土した、日本の鐘の銘では12番目の古さになる口径53.0�僂遼楙發蓮�外型を2段に分けた挽型法でつくった。一部の上帯の肉厚が1.5�个閥砲瓩毒�く厚さが不均一で、中型は削り中子法でつくった。成分はCu-10% Sn-14% Pb で鉛が多く、不純物としてS、Fe、As 等を含んでいる。
法隆寺夢違観音菩薩立像の切削研磨程度と鋳造技術　三船温尚、三宮千佳
要旨:　面と稜線の乱れを判定基準に用い、切削研磨程度の数値化をおこなった。最も程度が高いのは正面で、次に側面、さらに背面の順に低くなる。拝観者の視線が及ぶ回数が多い面部や手は程度が高く、これらから離れる部分は程度が低くなる。目に触れる機会が少ない裾裏面は、極めて程度が低い。
海獣葡萄鏡の編年の再整理と文様鋳造技法研究　持田大輔、三船温尚
要旨:　海獣葡萄鏡を、�’�代観の整理、�∪什邉史，寮莵垳Φ罅↓Ｃ鯊ぁ�製作痕跡の観察と推定、�ぢ仂伴存魁△粒胴猝椶砲弔い童‘い靴拭�「隋式鏡」の型式学的、製作技術的系譜を継いで7世紀前半代に成立し、7世紀末ごろまで新鏡式を生み出した。従来の「陰刻笵による蠟原型製作・失蠟法による鋳造法」ではなく、「蜜蠟浸透陶製笵による鋳造法」を新たに推定し、対照実験を実施した。7世紀から8世紀代の隋唐鏡製作技術を検討する上での新たな可能性を提示した。