日本考古学協会2018年度静岡大会プレシンポジウム

【内容】※本書「開催趣旨」より
静岡県考古学会は、創立50周年を迎え、その記念事業の一環として、一般社団法人日本考古学協会秋季大会を静岡大学と共催することにした。そこで、静岡県考古学会2017年度シンポジウムを静岡大会のプレシンポジウムに位置づけ、旧石器・弥生・古墳の「境界(はざま)」をテーマに実施する。
考古学では、型式学的手法に基づき資料を分類する。それにより抽出されるまとまりは、時間的・空間的に固有の分布領域をもつものであるが、調査資料の増加によって、この領域の中間的な事例も現れ、領域の基準が不明確になることもある。こうしたことから、弥生時代や古墳時代の範囲、東西日本の境界など、境界区分は常に議論の対象となってきた。
静岡県は、日本列島太平洋沿岸のほぼ中央部に位置し、西と東の結節点にあるとともに、台地や河川によって大きな分断が見られる。そのため、考古資料の分布領域の境界(はざま)、静岡県周辺に求められることも多く、本県周辺を東西日本の境界と捉えられることもある。このように、本県域は時代を超えて境界区分論にかかる問題を内包する地域と言われてきた。
考古学の研究は、対象とする時代や資料毎の細分化が進む中で、他分野においてどのような分析が行われ、どのように境界が求められてきたのかが見えにくくなっている。こうしたことから、時間的・空間的境界の指標には何があるのか、また境界は明確な線として、あるいは漸移的、あるいはモザイク的に表れるのか、ということについて時代を横断して比較したい。またこうした時代を超えた比較によって、静岡県域の特徴について改めて捉え直し、そして分析方法や視点を再考することに結び付け、次年度の大会で議論を深めるための足掛かりとしたい。
【目次】
基調講演
向坂鋼二　考古学からみた東西日本文化の境界
報告
山岡拓也　旧石器時代の境界と地域性
池谷信之　後期旧石器時代初期の静岡一黒曜石需給と陥穴猟からみた地域性―
篠原和大　弥生農耕空間の多様性と境界
小泉祐紀　静岡県における弥生時代の地域性と境界
太田宏明　横穴式石室地域類型からみた考古資料の分布境界領域の様相
田村隆太郎　静岡県の後期古墳研究にみる「東西のはざま」の評価