【主な内容】
本年は、昭和44年に国指定史跡『出島阿蘭陀商館跡』の発掘調査が始まって以来、半世紀を迎える節目の年にあたる。平成8年から行われた出島の史跡内の本格的な発掘調査の成果は蓄積され、復元整備事業に活かされている。また近年の対岸地の発掘調査についても、昨年報告書の刊行に至り、長崎市中と出島の関わりや江戸から明治への変遷など、新たな知見が報告されている。これらの最新の成果がまとめられたことを契機として、海外貿易、対外交渉の観点から、「対外交易の窓口 長崎・出島」というテーマを設定し、歴史的位置付けを改めて検討し、「出島」の本質を探る機会としたい。日本国内における対外交渉、貿易の窓口であった四つの口のうちの一つである薩摩は、独自の交易ルートを持ちつつ、長崎市中にも蔵屋敦を設けていた藩であった。また朝鮮貿易を担った対馬は、出島に近接する地に対馬藩蔵屋敷を設け、長崎貿易で得た交易品を対馬ルートで朝鮮へ輸出したほか、朝鮮人漂流民の返還など対外交渉の一役も担っていた。これらを含む九州諸藩と出島の関わりを軸とし、出島並びに近世長崎について、再評価を試みる。
【目次】
【報告】
山口美由紀「国史跡『出島阿蘭陀商館跡』」
田中学「長崎の蔵屋敷跡の発掘調査と成果について」
〔講演〕
渡辺芳郎「近世日本の「四つの口」　琉球口と薩摩を中心に」
木村直樹「九州諸藩から見る『長崎。出島』」
野上建紀「『出島』から伝わった肥前陶磁」
【資料】
年表「出島半世紀のあゆみ」
年表「対馬藩歴史年表」
絵図「長崎における御大名屋敷(蔵屋敷)分布図」
【寄稿】
田中亜貴子「コンプラ瓶について」
杉本茂喜「出島における発掘調査の視点」
「伝説の作業員」