今回のプレシンポジウムは3つの視点で構成します。
1点目は、縄文時代中期遺跡出土の植物遺存体データの集成、また水洗選別法を用いた注目される遺跡の調査事例やレプリカ法による種実圧痕の調査事例の紹介から、現状の値物遺存体の資料蓄積の現状を把握し、縄束時代中期の生業復元に向けた問題点を整理します。
2点目は、蓄積された植物遺存体データや同時期における日本列島や東アジアの動向を踏まえた上で値物利用の実態や栽培の問題を議論します。長野県大石遺跡などで出土した種実塊の正体は1980年代にシソ属のシソもしくは栽培種のエゴマということが判明しました。また、最近では日本テU島に野生種としてあったクリやマメ科植物が縄支時代に栽培され、大型化したとする仮説も提案され、注目されています。縄支時代に高度な植物資源利用があつたことは誰もが認めることですが、その延長に栽培があつたのか、また栽培と呼称してよいものなのか、様々な議論ができる筈です。
3点目は、高度な技術知というべき民俗事例及び民具の分析事例や岡谷市土師の会の皆さんの実験データを紹介することで、それらを縄支時代の生業復元に向けた参照枠として活かす可能性を検討します。(「開催にあたって」より抜粋)
<目次>
山田武文・佐々木由香・輿石甫・会田進　岡谷市内縄支時代遺跡出土マメ科種実とレプリカ法によるマメ圧痕調査
水沢教子　千曲市屋代遺跡群出土動植物遺体の調査と生業活動
佐野隆　梅ノ木遺跡における炭化物分析
中沢道彦　長野県における縄文時代中期の植物質食料利用について
小畑弘己　東アジアの新石器時代からみた縄皮時代の植物利用―最近の古民族植物学の成果と問題点―
早坂広人　縄文時代前期〜中期の年代と環境復元について
那須浩郎　遺跡出土植物種子による栽培植物と野生植物の識別
中村耕作・國木田大　クッキー状・パン状炭化物の炭素・窒素同位体分析とその出土状況
会田進・河西清光　長野県旧安曇村の1930年代救荒備蓄堅果類調査とドングリ食実験　故河西清光先生の研究軌跡を偲ぶ
輿石甫　ドングリ食の実験記録
山科哲　堅呆類の豊凶現象について
中沢道彦　長野県天龍村十久保におけるトチのアク抜き調査
上條信彦　使用痕・残存デンプンからみたトチ皮むき石
佐々木由香　縄文時代におけるクリとウルシの森林資源利用と栽培
中山誠二　山梨県における縄支時代の植物質食料の利用について
銅口正史　群馬県における縄支時代の植物質食料の利用について