【内　容】
湘南における縄文〜近現代の遺跡を探る〜
　神奈川県の南部、リゾート地として有名な“湘南”を考古学という視点でとらえ、新たな発見と課題を提起したものである。縄文時代に関しては注口土器の集成や砂層から出土する縄文土器の意義を、弥生時代に関しては、駿河湾や伊豆諸島に分布する弥生土器の存在や焼失住居址の分析を、古墳時代に関しては玄室横長平面の横穴墓や組合せ式石棺の集成、特殊な壁面仕上げの技法を紹介している。中世では十三塚の集成を行い、近現代に関しては、文明開化の象徴ともいうべき煉瓦を使った構築物について、現存する遺構の紹介と煉瓦製造会社の特定などを行っている。
【目次】
序文　坂誥秀一
縄文時代
　大磯町の意匠把手二例
　大磯小学校遺跡出土の注口土器
　砂層出土の縄文土器
弥生時代
　馬場台遺跡出土の弥生土器
　弥生時代焼失住居の一例　―構造と空間を探る―
古墳時代
　墓道小考
　玄室平面横長の横穴墓
　横穴墓付帯施設としての組合せ式石棺の一例
　肋状仕上げの横穴墓
中　世
　低地遺跡の実態
　十三塚
近現代
　赤煉瓦・耐火煉瓦と産業考古学
　海内第一避暑地の煉瓦構造物
　戦争遺跡から発見される焼夷弾
　煉瓦構造物
　「コンデルさん」の足跡　―赤星弥之助別荘の赤煉瓦―
　煉瓦造の鉄道橋梁　―特に馬入川橋梁を中心に―
【著者略歴】
鈴木一男(すずき　かずお)
1953年　神奈川県大磯町生まれ
1976年　立正大学文学部史学科考古学専攻卒業
大磯町教育委員会、郷土資料館長・福祉課長・教育次長・総務部長・首席理事等を歴任
現在、大磯町郷土資料館勤務
主要論文
「西相模におけるミニチュア土器について」『史峰』第14号　新進考古学同人会　1989年
「石神台」『大磯町文化財調査報告書』第35集　大磯町教育委員会　1992年
「北中尾横穴墓群」『大磯町文化財調査報告書』第39集　大磯町教育委員会　1993年
「神奈川県大磯町神明前遺跡の煉瓦遺構」『史峰』第19号　新進考古学同人会　1993年
「大磯町における遺跡発掘調査の記録〜先人たちの偉業を振り返る〜」『大磯町史研究』第4号　大磯町　1995年
「大磯町の横穴墓―詳細分布調査の成果と課題―」『考古論叢神奈河』第五集　神奈川県考古学会　共著　1996年
「第2章　研究史、第11章 近現代」『大磯町史』10　別編考古　大磯町　2007年